シェイクスピア戯曲の総まとめがテンペストであるとあちこちで聞いたり読んだりしていたので、最上の料理が最後に出てくる晩餐会に倣って、四十の歳まで、我慢して読まないでいた。四十歳になって、わくわくして開いたのだが、それほど面白くない。
後になって観た、ジョン・カサヴェテス主演の映画『テンペスト』の方が、ずっと楽しかった。白い建物とエーゲ海を大画面で眺めていると、あたかも、自分がその中に入って、一緒に魔法をかける事ができるような錯覚に陥ることができたのである。主人公の都会の喧騒に疲労困憊した惨めな顔もなかなかよかった。
結局、私のシェイクスピアは、「お気に召すまま」を最高の傑作とすることで、完了することになった。たわいないお遊び喜劇であるとも言えるが、他人に押し付けるわけでなし、私の好き嫌いは私が決めていいのだ。
その中の歌がすばらしい。さらさらしたアルファベットで書かれているため、山水画を彷彿とさせる。かえって漢字の陶淵明の詩の方が、私には油絵を観ているような気がしてならない。
今日は、私のシェイクスピアの千秋楽。奇をてらうことなく、易しい言葉で、寒い冬の中、生きていることだけで満ち足りていると命を詠うこの詩で締めることにする。
As You Like It
Act 2, Scene 5
Under the greenwood tree,
Who loves to lie with me,
And turn his merry note
Unto the sweet bird’s throat...
Come hither, come hither, come hither;
Here shall he see
No enemy,
But winter and rough weather.
Who doth ambition shun,
And loves to live i’th’sun...
Seeking the food he eats,
And pleased with what he gets...
Come hither, come hither, come hither;
Here shall he see
No enemy,
But winter and rough weather.

