老いの一筆

昔、銭湯で年寄り連が湯船につかりながら、政治談義に花を咲かせていました。今は、私がその年寄り。世事・世相を飾り気なしに語り合う伝統を銭湯ならぬネットで守り続けたいと思います。

暫定のたどり着く先

  工場に勤めていた頃の話。年中、現場では合理化、合理化の掛け声の嵐で、半年に1回、いわゆるカイゼン(改善)提案が審査・表彰された。それと同時に、品質管理の標語集めも行われた。

  私は、『取りあえず、取りあえずが、命取り』を生涯の傑作として提案箱に入れ、入選を祈った。私は例の工場長付だったから(すなわちヒマ人だったから)、選考委員の一人に選ばれ、山とつまれた応募作品の選考に当たった。平凡な標語がぞろぞろ出てきて、(例えば、『よい品を、みんなで作れば笑い顔』なんてレベル。消防庁の火災予防の標語並み)、ついに自分の番がきた。他の委員は笑うだけで、私がいくら、素晴らしいと褒めても、ボツになってしまった。

  工場の現場を一度でも経験したことのある人は分るだろうが、この『取りあえず』は実に便利な言葉である。しかし、あくまでもその場しのぎであるから、根本的な問題解決にはなっていない。そのうちに、しのぎきれずに、大問題に発展する。このパターンを私は何度も見てきた。また、私自身の仕事振りや生活態度も『取りあえず』で今日まできたようなものだから確信して言える。

  この苦い思い出を蘇がえさせられたのが、ガソリンの暫定上乗せ税率である。暫定は、くだいて言えば、『取りあえず』だ。何十年も『取りあえず』で済ませてきなのだから、ひずみが生じない方がおかしい。国交省も地方も、どうせ、取りあえずなのだからと言って、ゼネコンとグルになって、どんどん使い込んできた。

  今になって、この暫定上乗せが廃止されると、あたかも、今後、日本の道路が一本もできないかのようにまことしやかに説明し、人心を惑わす。

  そんなに上乗せ税の減少がたいへんだったら、まず、サバイバル・ゲームで遊んでいる防衛省から、その予算の1割を、国交省は分捕ってくればいい。それでも、足りなければ、政党助成金の半額返納を国会議員に迫ればいい。

  冬柴レスラーと石破レスラーが、福田レフリーを間にして、「道路が無くてもいいのか」、「軍隊が無くてもいいのか」と、最後には取っ組み合いのけんかをする。周りは、それぞれの省の高級役人が応援団として陣取っている。

  民の税金を心底ありがたく感じるのなら、これ位の事態に至っても当然ではなかろうか。

  暫定税は、撤廃すべし。

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