老いの一筆

昔、銭湯で年寄り連が湯船につかりながら、政治談義に花を咲かせていました。今は、私がその年寄り。世事・世相を飾り気なしに語り合う伝統を銭湯ならぬネットで守り続けたいと思います。

出征兵士の無事帰還を祝す NHK報道


  テロ特措法が切れたというので、軍艦が母港に帰ってきた。相変わらず、NHKが隊員にインタビューをしている。とんでもない話である。インタビューは、頭の中に何かがある者に対してするものである。自衛隊は国の安全を確保するためとの、大義名分がある。インチキであるが、とにかく名分が存在する。では、自衛隊員はどうか。人を殺すこと、傷を負わせること、これが仕事である。松島に近い私の所では、毎日ジェット機の航空ショーが見えるが、これとて、地上から見ればであって、パイロットは、人を殺す訓練に励んでいるのだ。頭には、To kill or to be killedしかない。自衛隊員の中には、並みの大学教授よりはるかに知能指数の高い者が大勢いるだろうし、テレビ出演の解説者よりはるかに世界情勢に詳しい者もいるだろう。しかし、それは、軍人としては何の意味もない。上官からの命令に従うだけの彼らには個々人の意志はあってはならないのだ。飛車や桂馬が、将棋指しの考えに関係なく、勝手に盤上をピョンピョン動いたら将棋にならないのと同じである。

  そういう人間にインタビューをするほど、バカな話はない。このバカな話をNHKは繰り返す。お人好しは、「まじめに働いてご苦労さん」という気になる。単細胞の人間も、「お疲れ様、ゆっくりお休みください」と声を掛けたくなる。立派にお勤め、即、立派なお仕事、即、給油活動は立派な活動と、すぐ短絡してしまう。このNHKの下心を、見抜けない民がわんさといるのだ。命令だけで動く人間は将棋の駒。無機質として扱われなければならない。彼らに、感情移入をしてはならない。それが出来ない民が多いのが現実である。

  無事に帰ってきて、こうだから、無言の帰還となったら、NHKは自衛隊員哀悼の(実は賛美の)特集を何本組むか、想像しただけで恐ろしい。簡単に無言の帰還と書いたが、日本国内で外敵の侵入に立ち向かった時には使わない表現。要するに既に、日本は海外に出兵しているということでもある。

  家族との面会シーンもあった。無事に帰ってくれてよかったと細君が喜んでいた。これは、長い遠洋漁業からようやく帰ってきた漁民の妻の言葉である。細君に喜ぶなと言うのではない。家に帰ってから、夫婦でじっくり無事を喜べと言っているのだ。公衆の面前で無事を喜ぶようでは、職業軍人の妻として失格である。無言の帰還となったら、おいおい泣き悲しむのだろうか。お人好しや単細胞の人間は、間違いなく、同情が極まり、敵愾心がいやでも高揚する。

  NHKよ、職業軍人をテレビに出して祝すのは、いいかげんに止めよ。軍人を甘やかすと、本当にテレビの主役になるぞ。韓国の光州事件、中国の天安門事件、今の、パキスタン、ミャンマー、ああいう風な登場となるのだ。私企業である新聞社が社旗を振って帰還自衛隊員を迎えるのはかまわない。だが、国民から受信料を取り、その報道を公共という偽装で行っているNHKを、私は見過ごすわけにはいかない。NHKは先の大戦で、軍人と同じように、時の権力者の言うがままであった。この悪しき伝統が今でも残っていることを、皮肉ってつけたのが、今日の題目である。

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